2011/06/08 Wed
ワシントンDC開発フォーラムでは、第5回ワークショップを世界銀行の会議室で6月6日(月)に行いました。約25名の方にご参加いただきました。


ここ数年、新興ドナーをめぐる議論が開発援助の業界で活発化しています。しかし、現場の実態に基づかない憶測に立脚するために、主に中国を対象とした過剰な「脅威論」も少なくありません。

今回のワークショップでは、東京大学東洋文化研究所准教授/プリンストン大学フェローの佐藤仁さんとアジア経済研究所海外調査員の佐藤寛さんをプレゼンターに迎え、被援助国の視点からみた新興ドナーのあり方について、問題提起をしていただきました。

前半は、佐藤仁さんに、JICA研究所で行った調査のハイライトを紹介していただきました。その調査は、「被援助国の視点からみた新興ドナー」というテーマで、カンボジアをフィールドに中国、韓国、タイ、インドなどの援助を検証したものです。
調査結果の全貌については、“Emerging Donors” from a Recipient Perspective: An Institutional Analysis of Foreign Aid in Cambodia”というタイトルで雑誌 World Development に掲載されています。

プレゼンの冒頭では、ある新興ドナーを批判した文章の穴埋めクイズで、どの国が批判されているのかを当てるクイズがありました。皆さんの予想はどこの国ですか?



ほとんどの参加者が「中国」と予想したのですが、本当の答えは「日本」。日本もかつて経済成長に伴い援助される側からする側に移行する時期、西側諸国の批判を浴びた経緯があったのです。この歴史は、今日本が中国等の新興ドナーのやり方についてどういったスタンスを取るべきなのか、興味深い示唆を与えてくれます(クイズの出典はODI(1964)『日本の援助』(外務省訳))。

佐藤仁さんの発表の中では、カンボジアなどの被援助国から見た際に、ドナーの選択肢が以前よりも増えたことは、被援助国側の交渉力の向上に資するのではないか、という点が強調されました。ただし、それが必ずしも途上国の国民や貧困層の便益に繋がっているかどうかは疑問で、それに答えるためには更なる研究が必要なようです。


後半は、佐藤寛さんがイギリスでの議論を踏まえ、中国の台頭を契機とした援助業界「主流派」の自信喪失とアフリカなど受け手側の戸惑いをどう考えるべきかを問題提起してくださいました。また、開発援助における新たなプレーヤーとしての民間セクターも、BOPビジネスなどを通じて資金源の多様化を進める存在としてクローズアップされました。

活発な議論は懇親会場に移ってからも盛り上がり、立食形式でネットワーキング・意見交換に花が咲きました。
ワシントンDC開発フォーラムは夏もBBLを中心に続けていきますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

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DC開発フォーラム

Author:DC開発フォーラム
ワシントンDC開発フォーラムでは、DC在住で開発に興味を持つ若手プロフェッショナル、大学院生同士の意見交換・交流を深めるためのワークショップを開催しています。従来のBBL(ブラウンバッグランチ)が専門家を招いてランチの時間を利用して討議をするのに対し、ワークショップでは20代・30代を中心とした若手に平日の夜を利用して発表の場を提供し、自由活発に議論を交わし、そして何らかの行動に結び付けていくことが狙いです。参加希望・お問い合わせはdev.forum.workshop@gmail.comまで。

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