2014/04/09 Wed
【第26回ワークショップ議事録】
3月27日(木)、世界銀行南アジア地域総局、持続可能な開発局、災害対策マネジメント及び気候変動ユニット、気候変動専門館の弥富圭介さんをお迎えして、「インド:気候変動どう向き合うか~州レベルでの気候変動対策の推進」というテーマで第26回ワークショップが開かれました。
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【テーマ】 「インド:気候変動とどう向き合うか~州レベルでの気候変動対策の推進」
インドは、近年の高い経済成長の結果、中国、米国に次いで世界第3位の温室効果ガス排出大国となっています。一方で、現在4億人以上の国民が未だ貧困に苦しむ中、気候変動に対して最も脆弱な国のうちの一つでもあります。インドはどのように気候変動を捉え、また国内の取り組みを推進していかなければならないのでしょうか。今回はインドの中でも特に貧しく、また2013年に大型のサイクロン“ファイリン”が直撃したオリッサ州を例に取りながら、インドの視点から気候変動問題と世界銀行の取り組みについて紹介します。

【プレゼンター略歴】 弥富圭介(いやどみ けいすけ):世界銀行 南アジア地域総局 持続可能な開発局 災害対策マネジメント及び気候変動ユニット 気候変動専門官
南アジア地域におけるカーボンファイナンスプロジェクトの開発、業務支援を主に担当。また、南アジア地域における低炭素社会の構築に向けた政策立案、調査業務、技術支援業務等に従事。日本の政策研究機関である地球環境戦略研究機関およびアジア開発銀行においてカーボンファイナンス及び気候変動政策に関する政策立案支援、調査業務支援を担当した後、2012年1月より現職。モントレー国際大学院にて国際環境政策修士取得。
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【プレゼンテーション】

1.途上国における気候変動と貧困問題
先進国よりも気候変動の影響に対して脆弱である途上国に対して、十分に立ち向かえるように、国際援助機関からサポートを行い様々な取り組みが行われている。将来予測(2013年、世銀)では、産業革命以前との比較による気温の上昇は、何も対策を講じなければ、4度上昇する確率が40%、5度以上の確率が10%とされる。4度上昇の場合、海面上昇は1メートル以上、結果として、水資源の減少が50%近くに及ぶ予測がある。現在でも地球の人口は70億、さらに人口増加傾向の中、減少する資源とどう向き合っていくかが課題。世界のいたるところで被害はすでに生じている。(2010年ロシアの熱波、2011年バンコクの洪水など)。

2.気候変動による貧困問題への影響
気候変動の影響は広範囲に及ぶ。熱波、干ばつ及び夏季の異常な猛暑;水資源の枯渇及び集中豪雨による川の氾濫;穀物栽培地域の減少及び農業生産性への影響;生態系の変化および貴重主の全滅の危機など。経済活動(農業、海洋産業)・健康被害・食料の安全確保や食料品の高騰;都市人口の増加、移住区の当会、飲料水の確保などもある。

3.気候変動問題への取り組み
二つの大きな国際的な枠組みは、国連の気候変動枠組み条約(UNFCCC)(1992署名、1994年発効、195カ国参加)と京都議定書(1997年合意、2005年発効)。京都議定書は、先進国への取り組みに対する削減義務を目指した枠組み。第一約束期間(2008-2012)終了後は、引き続き第2約束期間(2013-2020年)が存在するものの、日本、アメリカなど主要排出国は参加していないので、効果が不透明な枠組みとなっている。途上国、先進国双方が参加可能な枠組み策定のための会議が続いている。

4.2013年以降の将来の国際枠組みの争点:
2050年までに温室効果ガス排出量の半減(気温上昇を2度以下に抑えるため)と、2020年までに年間1000億ドルの資金が必要(2011年グリーン気候基金設立)ということで、京都議定書の枠を超えた枠組みが必要になっている。京都議定書の義務付け対象国の排出率は、世界中の27.4%のみ。半分以上の排出は途上国からなので、今後さらに、途上国にも削減活動を促す枠組みの形成が必要となっている。2015年12月パリで開催予定のCOPで決定予定だが、なかなか一致の意見をまとめるのは難しい状態。

5.インドにおける気候変動問題
二酸化炭素排出大国は、一位が中国、二位アメリカ、三位インド。ただし、インドの一人当たり排出量は途上国の中でも少ない(平均5トン、アメリカ9トン、日本5トン、インドは1トン強)。2008年、インドでは気候変動国家行動計画及び8つのミッションを策定した。2009年、国内のGDPベース排出強度を2005年基準で25%削減することを提案。第12次五ヵ年計画(2012年~)にて低炭素成長戦略を提案、また、クリーン開発メカニズム(CDM)による温室効果ガス削減事業を積極的に推進。2010年の再生可能エネルギー証明書、2012年の省エネ証明書など市場メカニズムを次々に導入(国内企業に、省エネ目標設定を義務づけといった仕組み)している。

6.オリッサ州気候変動行動計画
オリッサ(人口約4000万、日本の半分の面積)は国内でも貧しい州で、人口の約半分は貧困ライン以下、農村人口率80%(インド平均は70%)。気候災害の多い州で高い脆弱性指標、ベンガル湾で発生した過去三分の一のサイクロンが州を直撃。その一方で、天然資源発掘に伴う経済成長は高い率で維持されている。エネルギー需要も増加し、石炭火力ベース電力の増加を見込んでおり、結果として、温室効果ガス排出の多い州になっている。

気候変動問題は州の成長戦略と貧困削減に重大な影響を及ぼすため、州内の体制と能動的な政策の整備及び速やか実施が必要。ハイレベル調整運営委員会とワーキンググループを設立、2010年に州の気候変動活動計画を策定・公表、11特定分野における緩和・適応応対策(農業、エネルギー、交通、水など)を立案した。問題点としては、人材不足(州レベルで、地域の省庁関連者も、環境省以外は知識も費やせる時間も不足している);潜在案件の資金確保の未計画(詳細計画がつめられていない);影響指標評価の未設定;長期計画の欠落などがある。

7.世界銀行の支援
世銀では、州政府からの依頼に基づき、気候変動行動計画実施のための無償技術支援を行っている。支援全体の業務(2014年1月~2015年6月)は、行動計画の進捗評価の実施;他世銀案件との相乗効果分析;低炭素成長のための分野別支援;州政府の基盤・能力強化など。弥富さんの日々の業務としては、内部向けの提案書の作成、支援実施に必要な資金の確保、各支援業務のチーム編成及び調整、コンサルタント業務の支援・管理、担当業務(都市省エネ分析調査など)の現地調査の実施、州政府向け提案書の作成支援などがある。

8.(世界銀行の気候変動全体に対する取り組み)
130カ国における気候変動対策を支援。取り組み内容は、
• 71億ドル(2012年度の気候変動緩和向けの支援額)-クリーンエネルギー、公共交通手段を増やすことで個人の輩出する温室効果ガスを減少する努力など)
• 46億ドル(2012年度の気候変動適応向けの支援額)(前年度比2倍)
• 国別援助・パートナーシップ戦略における対策強化
• 機構投資基金によるクリーンエネルギーの促進や低所得国の適応能力の強化を支援
• カーボンファンドによる温室効果ガス削減へ貢献(1.3億ドル、13基金)
• グリーン債権の発行(33億ドル、17カ国)
など。クリーンエネルギーは、投資になりうるので、途上国への負担になるとばかりもいえない。ただし、投資コストは依然として従来の化石燃料ベースのエネルギーより高くなる。カーボンファイナンスや気候関連のファンドなどの資金活用を促進することで、費用対効果を高めて新しいエネルギーを促進することを行っている。
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【質疑応答・ディスカッション】
Q:ポスト京都議定書に関して、合意にいたるためのシナリオはあるのか?
A:全体合意は排出大国がどこまで野心的な目標を公約できるかが焦点になってくる。交渉グループは細かくわかれていて、サブグループ(森林減少防止のための枠組みなど)では大方の合意ができていることもある。個別交渉グループの合意を増やして、ボトムアップの形で合意に持っていくほうが可能性があるが時間は非常にかかるといわれる。コペンハーゲンでのCOPでは、首相レベルなどハイレベルの会合(インド首相、アメリカ大統領、日本首相、中国国家主席などが出席)をしたが、少数の国でトップダウンで決定する方法に対して他国から大いに批判が出た。合意できることを積み重ねて、実質的に効果があって動くことができる枠組みをつくっていくアプローチが大事だろうと思われる。

Q:インドで前年にサイクロンがきたために対策をとり、次年度には予測をし非難命令が出たために策が成功した事例を聞いたことがあるが、何か具体的に現地で聞いた話があれば?
A:2007年サイクロンの経験をもとに、オリッサでも災害危機対策の部署が今後の計画を緻密にたて、昨年の災害時に実施をして、大きな効果を生むことができた。

Q:国別の排出量はどうやって測っているのか?
A:国連に排出量測定のためのガイドラインがある。基準の指標に対して、その国における排出源をカウントし、基本的には基準値とユニット数に基づいて計算される。生物(人間の呼吸、バイオマスなど)の排出はニュートラルとしてカウントされていないが、畜産農業からのメタン排出はカウントされている。個別の削減事業では、例えばネパールなどで、排出物をためて強制発酵させメタンを発生させ、それをエネルギーとして家庭内で使う手法が、削減対策として世銀のカーボンファイナンス事業として支援されている。

Q:世銀の技術支援の際、知識移転などが売りとされるが、他の国や都市での気候変動における知識がシェアされているのか?
A:いろいろな国が参加する集まりで南南協力や先進国からの国レベルでの知識のシェアは行われているが、先進国の地方自治体の取り組みに反映させる方法はまだ模索中。

Q:具体的な世銀側の支援チームの編成は?
A:広範に及ぶ仕事の中で、優先付けをし、影響の大きい、たとえば都市、交通とエネルギーに関して、そのセクターの専門家を集めて支援事業を行っている。

Q:以前、国際会議の場で、たとえばILOはグリーンジョブや人材開発といった得意分野を担当する、といったコーディネーションを見たことがあるが、各機関の得意分野を生かしたドナー間の調整、役割分担名はどのように行われているか?
A:オリッサ州以外では、UNDPや他の機関が他の州の気候変動行動計画を支援しており、今後さらに強化して実施する話が出ている。

Q:地方自治体はどのようなインセンティブを持って活動を行っているのか?特に途上国で、インセンティブを高めるためにどのような仕組みを作れるのか?(日本は倫理的な観点やマーケットの仕組みを使っておこなっている)
A:オリッサでは、目的意識は比較的すでに高い。インセンティブというよりも、例年のサイクロンへの対策など、必要に迫られている状況ともいえる。意識は高いが、さらなるサポートを受けるために世銀や日本政府などにも働きかけている。市場メカニズムへの期待は、現在は相対的に低い。中国では、国内で新しい市場(排出量取引制度)をつくって対策を講じるような試みが行われている。インドでは、似たような取り組みをしようという動きはある。

Q:インドは州レベルで法的な義務付けはできるのか?
A:アメリカと同じで、連邦共和国政府として、地方分権が進んでいる一方で連邦直轄領では中央政府の権限が残されている。

Q:となると、表示義務を設けて「見える化」をするのが一番簡便であるように思われるが、どうだろうか?スマートメーターを作っている日本のメーカーも仕事ができるかもしれない?
A:インドの日本大使館との話し合いでも、「見える化」の話が出たが、制度としてどこまで促進できるかについては、インド内ではまだ機運が高まっていないのが現状。ただ、パイロット的に行うことは可能だと思われる。

参加者からその他のコメント:
• 州、国にも、ニーズはあるように思う。適応策も、たとえばバングラでは太陽光パネルが広く使われている。コストもかかるが、すでにあるインセンティブを生かしていると感じた。
• プレゼンがとてもまとまっていてわかりやすく、勉強になった。

終了後は、弥富さんを含め15人ほどで、懇親会が行われました。
2014/03/18 Tue
【DC開発フォーラム第26回ワークショップのご案内:3月27日(木)「インド:気候変動とどう向き合うか~州レベルでの気候変動対策の推進」】

DC開発フォーラムでは、平日の夜を利用して、途上国の開発に関わる20代・30代の若手を中心にプレゼンと自由な議論を行い、知識を深めるとともに何らかの行動に結び付けていくことを狙いとしたワークショップを開催しております。
第26回となる今回は、「インド:気候変動とどう向き合うか~州レベルでの気候変動対策の推進」というテーマで、世界銀行にて気候変動専門官としてご活躍の弥富圭介(いやどみ けいすけ)さんをプレゼンターにお迎えし、インドの視点からの気候変動問題と世界銀行の取り組みについてご紹介いただき、参加者のみなさんとディスカッションしていきたいと思います。

参加ご希望の方は、下のワークショップ詳細をよくご確認の上、下記URLの登録フォームよりご登録ください。会場準備等の都合により、3月26日(水)までにご登録いただきますようお願い申し上げます。
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dDVmdGZjV2ZnQ2ctb1lUR1JhODBXZ3c6MQ#gid=0

遠隔での参加希望の方のためにWeb中継も行う予定です。以下のURLから視聴ください。
https://www.youtube.com/watch?v=XjRVPQdEAfU

そのほかご不明の点はま でお問い合わせ下さい。

DC開発フォーラム 企画担当

----------------------------------------------------------------------
DC開発フォーラムHP: http://www.devforum.jp/
facebookページ: http://on.fb.me/rtR9Le
ブログ: http://dcdevforum.blog.fc2.com/
twitterアカウント:@DC_dev_forum


::::::::::::::: ワークショップ詳細:::::::::::::::::::::::::::::
ワシントンDC開発フォーラムでは、第26回ワークショップを3月27日(木)に行います。

【テーマ】「インド:気候変動とどう向き合うか~州レベルでの気候変動対策の推進」
インドは、近年の高い経済成長の結果、中国、米国に次いで世界第3位の温室効果ガス排出大国となっています。一方で、現在4億人以上の国民が未だ貧困に苦しむ中、気候変動に対して最も脆弱な国のうちの一つでもあります。インドはどのように気候変動を捉え、また国内の取り組みを推進していかなければならないのでしょうか。今回はインドの中でも特に貧しく、また2013年に大型のサイクロン’’ファイリン’が直撃したオリッサ州を例に取りながら、インドの視点から気候変動問題と世界銀行の取り組みについて紹介します。

【略歴】
弥富圭介(いやどみ けいすけ)
世界銀行 南アジア地域総局 持続可能な開発局 災害対策マネジメント及び気候変動ユニット 気候変動専門官
南アジア地域におけるカーボンファイナンスプロジェクトの開発、業務支援を主に担当。また、南アジア地域における低炭素社会の構築に向けた政策立案、調査業務、技術支援業務等に従事。日本の政策研究機関である地球環境戦略研究機関およびアジア開発銀行においてカーボンファイナンス及び気候変動政策に関する政策立案支援、調査業務支援を担当した後、2012年1月より現職。モントレー国際大学院にて国際環境政策修士取得。

【日時】
3月27日(木) 18:30-19:45
ワークショップ終了後、世銀会議室内でスナックを用意して交流の機会を提供する予定です。参加される方からは、当日、実費一人当たり2ドル程度を申し受ける予定です。詳しくは登録者に当日朝までに送付される会場案内をご覧ください。

【会場】
世界銀行会議室 MC2-850 (世銀メインビルの2階、850号室)
The World Bank, 1818 H Street, NW Washington DC 20433

【参加登録】
参加ご希望の方は、下記登録フォームより3月26日(水)までに参加登録をお願い致します。
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dDVmdGZjV2ZnQ2ctb1lUR1JhODBXZ3c6MQ#gid=0
世銀もしくはIMFのIDをお持ちではない方につきましては、visitor passを こちらで事前に申請致します。当日朝までにお送りする会場案内にしたがって入館いただきますようお願い致します。なお、入館に際して写真付きID(英語)が必要となりますので、必ずご持参ください。 登録にご不明の点がある場合、または、当日朝までに会場案内のメールが届かない場合は、 ワークショップ担当(dev.forum.workshop@gmail.com)まで、ご連絡ください。

皆様のご参加をお待ちしております。
2014/03/06 Thu
DC開発フォーラムでは、平日の夜を利用して、途上国の開発に関わる20代・30代の若手を中心にプレゼンと自由な議論を行い、知識を深めるとともに何らかの行動に結び付けていくことを狙いとしたワークショップを開催しております。

第25回となる今回は、「高齢化問題をポジティブな力にかえる―住民主体の地域再生、『居場所ハウス』の事例から」というテーマで、環境行動学(老年学)者、NPO「Ibasho」代表の清田英巳(きよた えみ)さんをプレゼンターにお迎えし、高齢者の知恵と経験を活かした地域再生をめざす『居場所ハウス』の活動事例をご紹介いただき、参加者のみなさんとディスカッションしていきたいと思います。

参加ご希望の方は、下のワークショップ詳細をよくご確認の上、下記URLの登録フォームよりご登録ください。会場準備等の都合により、3月10日(月)までにご登録いただきますようお願い申し上げます。
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dDVmdGZjV2ZnQ2ctb1lUR1JhODBXZ3c6MQ#gid=0

遠隔の方には、Web配信も予定しております。リンクの詳細などは、リマインダーメールにて改めてご連絡させていただきます。そのほかご不明の点はま でお問い合わせ下さい。

DC開発フォーラム 企画担当

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DC開発フォーラムHP: http://www.devforum.jp/
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ブログ: http://dcdevforum.blog.fc2.com/
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::::::::::::::: ワークショップ詳細:::::::::::::::::::::::::::::::
ワシントンDC開発フォーラムでは、第25回ワークショップを3月11日(火)に行います。

【テーマ】「高齢化問題をポジティブな力に変える―住民主体の地域再生、『居場所ハウス』の事例から」
今後ますます問題になってくる世界的な高齢化社会。でも、多くの人が想像するネガティブな部分ばかりに焦点をあてず、高齢者の多い社会のプラスの面を活かしつつこの問題に取り組むことはできないでしょうか。その一つのアイデアとして「Ibasho」が提案するのは、「地域で高齢者の面倒を看てあげる」という考え方ではなく、「高齢者の知恵と経験を活かした地域再生」という、これまでの社会概念を変えていく方法です。また、地域住民にオーナーシップを持ってもらい、地域住民によるプロジェクトの持続を目標にする際、外部団体がどのように関わり、サポートをしていったら良いのかという点も重要な課題になってきます。この「高齢化社会」への新しいアプローチを、『居場所ハウス』の事例を通してお話させていただき、参加者のみなさんと議論できればと考えています。

【略歴】 清田 英巳 (きよた えみ)
環境行動学(老年学)者、非営利団体「Ibasho」代表。
ウィスコンシン大学建築学博士課程、カンザス州立大学建築学部修士及び同大学園芸療法学修士修了。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカにおける、高齢者のための住宅、病院、保健施設のデザインに関するプロジェクトに数多く携わる。これらの仕事に加え、2010年、同志たちと共に、「Ibasho」を発足。社会、経済、環境面において持続可能な、高齢者の知恵や経験を生かすことができるコミュニティづくりを目指した活動を行っている。地域住民が中心となり、そこが自分の「居場所」であると感じられる地域再生をサポートする活動は、ブータン、スリランカ、コートジボワールなどに広がっている。東北大地震後には、被災地において初めてとなる試み「Ibasho Cafe」の創設をコーディネート。地域の高齢者たちが主体的となって活躍できる場づくりに貢献している。「Ibasho」のホームページはこちら:http://www.ibasho.org/web/

【日時】
3月11日(火) 18:30-19:45
ワークショップ終了後、世銀会議室内でスナックを用意して交流の機会を提供する予定です。参加される方からは、当日、実費一人当たり2ドル程度を申し受ける予定です。詳しくは登録者に当日朝までに送付される会場案内をご覧ください。

【会場】
世界銀行会議室 MC2-850 (世銀メインビルの2階、850号室)
The World Bank, 1818 H Street, NW Washington DC 20433

【参加登録】
参加ご希望の方は、下記登録フォームより3月10日(月)までに参加登録をお願い致します。
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dDVmdGZjV2ZnQ2ctb1lUR1JhODBXZ3c6MQ#gid=0
世銀もしくはIMFのIDをお持ちではない方につきましては、visitor passを こちらで事前に申請致します。当日朝までにお送りする会場案内にしたがって入館いただきますようお願い致します。なお、入館に際して写真付きID(英語)が必要となりますので、必ずご持参ください。 登録にご不明の点がある場合、または、当日朝までに会場案内のメールが届かない場合は、 ワークショップ担当(dev.forum.workshop@gmail.com)まで、ご連絡ください。

皆様のご参加をお待ちしております。
2013/11/27 Wed

11月14日(木)、世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域総局交通ユニットでブラジル道路開発案件に従事されている荻田さんをお迎えして、「インフラ開発のソリューションバンクを目指して~ブラジルの道路開発における試み」をテーマにワークショップが開催されました。

【プレゼンター略歴】荻田 聡(おぎた さとし)
世界銀行 ラテンアメリカ・カリブ地域総局 持続可能な開発ネットワーク 交通ユニット
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東京大学工学部卒、東京大学新領域創成科学研究科国際環境協力コース修了。開発コンサルティング企業である株式会社パデコの交通インフラ計画の専門家として東南アジア、南アジア、中東、東欧の15の途上国にてコンサルティング案件に従事。2009年よりハーバードケネディースクール公共政策学修士課程に留学し交通経済とインフラファイナンスを専攻。2011年より現職。ブラジルの交通セクター案件を担当。

1.世界銀行のインフラ案件ポートフォィオ
(1)交通セクターで全セクターの22%を占めている。
(2)交通セクターの内訳は、道路案件65%、鉄道16%となっている。

2.ブラジルの交通問題
(1)交通手段としての道路への依存度が高い(60%)
(2)都市部での過度の交通渋滞・公共交通の過小供給 
例:ラッシュ時に地下鉄駅に入るのに40分かかることがあった。
(3)交通セクター開発当局の連携不足
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3.現在のブラジルでの世銀交通案件
(1)州単位での案件が中心で、現在5州にて実施
(2)インフラへの融資とともに各種技術支援も行っている
(3)インフラ案件 = エンジニアリング とは限らない(以下の主要トピック)

4.案件サイクルごとの論点
(1)案件準備
道路分野の案件策定時には、以下2つの便益が重視される。
 移動時間減少(例:交通渋滞で車にいる間は働けないが、会社はそれに対して無駄に給料を払っている)
 燃料使用量減少

以上2点を金額ベースに積算したtransport cost(交通費用)がいかに道路案件実施によって減少するかが案件策定段階において重要な指標。

一方、Tocantins州では、雨季に増水し車が通れなくなる箇所を通行可能にするための橋や排水管の建設を行っているが、田舎においては交通量が少なく(渋滞がないため)交通費用削減効果は低いなどの理由より、transport costをベースとした案件策定は難しい。そのため、コミュニティ参加型アプローチを採用した。具体的には、139ある市長村毎に住民を集めて、事業を優先すべき道路を投票で決定した。参加型アプローチには透明性向上、途上国オーナーシップ向上などが利点として挙げられるが、コミュニティ内の政治的関係などにより事業の必要がないサイトが選定される可能性もある。(これはエンジニアが選ばれたサイトを全て訪問し、必要か否か判断することで対応した)また、会議への出席するための役場までの移動に負担がかかる点も挙げられる。

(2)維持管理
完工後の定期的なメンテナンスは非常に重要なものの、社会から着目されにくいためメンテナンス予算は優先されにくい。PPP(交通量の多い道路対象)やコミュニティ主導(低交通かつ未舗装道路対象)によるメンテナンスといったアプローチが存在するが、中・小交通量の舗装道路には適用できない。。そこで民間企業のパフォーマンスを高めるため、従来のインプット(使用材料、労働者、機械に基づく支払)ベースの契約に代えて、メンテナンスの質に基づいて支払うPerformance-based contract(PBC)を採用している。これにより費用削減や品質向上につながった。一方、契約当初に予期しなかったリスク(例:交通量が増加しメンテナンス費用が増加)が実際に起こった際の費用負担をどうするかという問題もある。これについては、できる限りリスクが少ないと判断される案件でPBCを採用することで対応している。

(3)インパクト評価
案件実施により交通費用が減少することはわかっているが、どれだけ貧困削減に貢献したかを定量的に測定することは難しい。
1) インパクト評価手法においては、Treatment group (受益者グループ)とcontrol group (比較(非受益者)グループ)の差をインパクト(成果)と考える。
2) Tocantins州の案件で実施したインパクト評価によると、案件により向上した成果測定指標は、収入、女子学生の就学率、バス通学率、自家用車使用率、就業機会など様々(統計的有意)。ただし、健康面への影響はみられなかった。
3) インパクト評価の難点:a)優良な非受益者サンプル(control group)抽出の難しさ:Control Groupは受益者グループと可能な限り性質が似ている必要があるが、実際に探し出すのは難しい、b)案件成果が出るまでかかる時間が長い:地元経済に影響を与えるまで5年ほどかかるという研究結果があるものの、5年もたてば近隣で他のプロジェクトも実施され、1案件のインパクトを測定するのはさらに難しくなる。
4) 今後の課題・展望:優良control group選定のための調査、短期で効果がでやすい、人の流れなどの交通行動の変化や、地元ビジネスへの影響を与えたかという視点に評価を絞る。

5.まとめ
(1)世銀の付加価値として、What to do(何を作ればよいかという目的は明確)から How to do(どうやって道路を造っていくか)という視点が求められている。
(2)世銀内での様々なセクターの関与。(教育セクター、環境セクター、公共セクター等)
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【質疑応答】

1.住民の要望と技術的な制約で衝突があったときにどのように対応したのか?
>この案件については、住民集会のつけた結果が優先された。ただ、仮に最優先となった道路でも、エンジニアにより明らかに工事の必要がない(つまり雨季でも車が問題なく通過できる場合)と判断される箇所は却下した。

2.コミュニティベースのメンテナンスについて、コミュニティのインセンティブは何なのか?
>コミュニティと幹線道路を結ぶような死活問題が関わる道であれば、政府の早期対応をあてにならない場合は特にコミュニティ主導で進めるメリットがある。

3.インパクト評価について
インパクト評価によって明らかにある指標が悪化していることが判明した場合、クライアントにどう説明するのか?
>インパクト評価は悪い結果も含めてレポートにまとめて先方政府に説明することになっている。


4.州政府のあるべき姿は?
>迅速な意思決定は重要。一方で世銀案件では自国で定められた手続きではなく世銀のガイドラインに従って手続きを進める必要があるため、それが意思決定速度に影響を与えている可能性はある。また、利害関係省庁が増えるほどその分迅速な意思決定は難しくなる(道路案件を防災と絡めて環境省も交えると案件実施速度は低下する)

5.田舎と都会の道路建設割合はどのように決定しているのか? 
>州政府とPro-poor(貧困者の生活向上の視点)で何が必要か議論した上でどのような投資が必要か決定している。

6.インパクト評価のための統一的指標の開発はなされているのか?
>案件ごとに特徴が異なるため、統一的な指標は難しい。長期的な課題の一つ。

7. 案件形成に際して、どれだけ世銀の影響力があるのか?(たとえば、サンパウロとリオのような大都市案件の場合と州の田舎案件の場合で)
>サンパウロなどの大きな州になると、世銀の影響力は地方の州の案件と比べて低下すると言える。連邦政府からは融資は不要といわれている。ただし、技術支援は期待されている。

8.現地政府が維持管理を行うことを案件締結時に融資条件の一つとして約束しているのか?
>ブラジルの道路案件は維持管理そのものの案件が多いのでこのような融資条件はあまりないが、Tocantins州の農村の橋の案件の場合、州政府が市町村に対して維持管理をすることを案件実施の条件として覚書を結んでいる。

ワークショップ終了後は荻田さんを交え、参加者約25名での懇親会が行われました。
2013/11/13 Wed
ワークショップ議事録
「未来志向の社会起業家支援~東北を越えてアジアの発展へ向けて~」

【プレゼンター略歴】山本 未生(やまもと みお)
一般社団法人World in Asia代表理事。2011年、東日本大震災を機に、米国およびアジアのプロフェッショナルと共に、日本およびアジアで社会起業家へ社会的投資を行う一般社団法 人World in Asia(WiA)を設立。2013年7月より同代表理事。2013年MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業。WiA設立以前は、化学メーカーで働く傍ら、ビジネスセクターとソーシャルセクターの橋渡しをしようと、2005年よりSVP東京(ソーシャルベンチャー・パートナーズ 東京)のパートナーとして、革新的な社会起業家を「汗と時間とお金の投資」で支援。
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フィリピン・マニラのスラムでのホームステイやマレーシアの孤児院でのインターンの経験がきっかけとなり、有効な支援には資金が必要と痛感。民間セクターからの支援を考えるようになり社会人として働く傍ら社会起業家として働くようになった。

MITに留学をする直前に東北大震災があり、東北支援のためにWorld in Asia(WiA)を立ち上げ、ボストンから遠隔で働き、MIT卒業後にフルタイムで働くようになる。
World in Asiaのミッション:ポテンシャルがある社会起業家を発掘、支援を行う。日本のみならずアジアの起業家も支援するしていく予定。
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財団から財政支援を頂き、社会起業家へのハンズオン支援やパートナーシップ構築等を行っている。
社会起業家の定義:我々の定義「社会の負の連鎖を正の連鎖を持続的に変えることのできる人」
社会起業家の事例:ケニアのスラム支援。土地を政府から買い取りタイトルを得て、治安や衛生面の環境改善を目指して家の改善するための金融アクセスを支援する。これにより生活環境が悪いスラムでは投資もできなくてにいつまでも貧困のままという負の連鎖から、生活環境の改善により収入機会が増えてその地区の社会経済の発展を促すという正の連鎖に転換することができる。

インドと東北の事例。東北の障碍者を雇用する企業への支援。インドの難聴者(被差別者)に対するトレーニングを行うNPO。社会起業家という観点から見ると、障碍者に対する意識、彼らが働くために必要な教育の提供などの課題は先進国も途上国も共通。

Hybrid Value Chain:震災後、大学生を通じてが東北の子供たちの学習支援を行っている始めた。最初は避難所で行っていたが、その後既存のオンライン教育を導入。オンライン教育企業と地元NPOをつなげ、単にオンライン教育を行うだけではなく現地でコーチやメンターの育成を行い、低所得者層に効果的な教育の機会を提供を実現した。
今までの2年間は東北の支援を行っていたが、これからはアジア地域にインパクトインヴェストメントを展開したい。様々な専門性を持っているパートナーを募集している。

パートナー募集詳細はWorld in Asia公式HPまで http://worldinasia.org/

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【質疑応答】
1.社会起業家は負の連鎖を正の連鎖に変えるという意味ではNGOでも企業内でも可能であり、とても幅が広いと感じた。
>社会起業家に決まった定義はなく、我々が好きな定義だとそうだ。他のNGOでは違う定義をしており、例えば社会的成果と財務的成果の両方を求める組織という定義もある。株式会社も社会企業家になりえるが、収益追求が目的なのか不透明になりやすいので一定の収益を社会投資にまわすなど明確なコミットメントが必要。フィリピン人が立ち上げたSEELSというNGOは株式会社という形で設立した。

2.インドで学校を建設支援した際に低所得者層を雇用をしたが、勤務態度が良くなくてそもそものプロジェクトがうまくいかない事例があった。そのような場合はどう対処しているか。
>マネージャーだけは外から連れてくるか作業内容を変える、プロジェクトデザインを変えることもできるが、正面から対応することもできる。住友化学のネットをタンザニアで技術移転をした際に同様にスキルの問題があった。その際にはキャパシティビルディングを行った。具体的にはマネージャーに折り紙を教えて手の器用さを鍛えながら長期に渡り支援し、成果があった。

3.World in Asiaの仕事内容について、パートナーシップ構築について、もともと関係なかった2つの組織を継続的につなげるのは非常に難しいと思う。実際はどのようにしているのか。また失敗の事例はあるか?
>Eラーニング企業にとってはBOPの可能性があるということは東北のNGOとつながってから始めてわかった。さらに海外への展開も検討している。そもそもは友人を通じて知り合った。World in Asiaではそのような異なる組織間の意見調整をミーティング等に参加しながら行っている。つなげる組織をきちんと事前に評価理解、評価していないとパートナーシップは難しい。

4.支援をしている起業家はもともと東北にいた起業家なのか、他地域のものなのか。東北の地域性は他の地域とは異なる。
>現在9つの社会起業家への支援を行っているが東北にあったものと東北以外にあったものを持ってきたものの2グループがある。他地域のものをそのまま東北にもってきてうまくいかない事例もあったので、そこは事業内容を現地の需要にあわせて調整している。

5.福島は事情が違うが、どのようなことを行っているか。
>子供への支援も子供の数そのものが減っているので難しいが、子供に対する環境教育分野で挑戦しているNGOもいる。

6.World in Asiaはどのように収益を確保しているのか。日本ではこのような仲介的なNGOは簡単ではないと思う。
>ファンドを作りたいと考えている。我々自身が人を抱えるモデルではなく、ソーシャルベンチャーパートナーシップという制度を作り、パートナーから一定額を拠出してもらい、社会起業家への資金へを確保したい。日本固有の問題としては社会問題のマーケットが小さい。アジア全体に展開したい。

7.支援先のファイナンシャルサステナビリティーについて、社会起業家によっては利益がでないような貸し先もあるが、社会効果と財政効果をどうバランスをとっているのか。
>現状は資金のキャパシティーの問題でシードグラントしか出しておらず、ローンやエクイティーへの支援は行っていない。社会効果と財政効果のバランスについての基準はこれから作っていきたい。


ワークショップ終了後は山本さんを交え、参加者約25名でのネットワーキングセクションが行われました。

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Author:DC開発フォーラム
ワシントンDC開発フォーラムでは、DC在住で開発に興味を持つ若手プロフェッショナル、大学院生同士の意見交換・交流を深めるためのワークショップを開催しています。従来のBBL(ブラウンバッグランチ)が専門家を招いてランチの時間を利用して討議をするのに対し、ワークショップでは20代・30代を中心とした若手に平日の夜を利用して発表の場を提供し、自由活発に議論を交わし、そして何らかの行動に結び付けていくことが狙いです。参加希望・お問い合わせはdev.forum.workshop@gmail.comまで。

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